不埒な専務はおねだーりん

「あ、かずさちゃん」

「お兄ちゃん……?」

浜井さんにも挨拶をしようと秘書室に戻ると、なんと松葉杖をついたお兄ちゃんが浜井さんに支えられるようにして立っているではないか。

今朝方退院したばかりで、出勤の予定は明日からになっていたはずなのになぜ……?

「見て見て!!遼平先輩ってばぜんぜん松葉杖が似合わないの~!!」

浜井さんは退院したてだということをお構いなしにきゃっきゃと囃し立てると、左足のギブスに油性マジックで相合傘を書き始めた。

「うるせーよ、浜井。それと落書きするのはやめろ!!」

ゴツンと鈍い音がしたかと思えば、お兄ちゃんは浜井さんに容赦なくゲンコツを食らわせていた。

「痛いっ!!遼平先輩、痛いです!!」

夫婦漫才のようなほのぼのとした光景を見て少し安心する。私がいなくなっても、これなら篤典さんも寂しくない。

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