不埒な専務はおねだーりん
「かずさあ―――!!」
再会のハグにしては些か熱烈すぎる抱擁を与えられて身体が硬直した。
しばらく会っていなかったせいか、蓄積された鬱憤を晴らすようにここぞとばかりに抱きしめられる。
「いやあ~、代わりの秘書がかずさだなんて遼平も粋なことするよなあ~」
これでもかと言わんばかりにハートマークをまき散らしながらうりうりと頬ずりされると、さすがに不満を訴えられずにいられない。
「は、離してくださいよ、篤典さん……」
「もう、かあいいなああ。かずさは……」
制止されてもなおとどまることを知らない愛情表現を目の当たりにして、私は説得を早々に諦めた。
昔から篤典さんは一事が万事この調子なのだ。
ちょっと変わっているというか……。
なんにでも興味を持ち、一途で真っ直ぐ。
ユーモアと茶目っ気に溢れる子供のような大人。
完璧過ぎる経歴や外見とは裏腹の自由奔放な性格が、彼が曲者と言われる所以である。
うーん。強いて言うならギャップ萌え?
「会いたかったよお……。かずさに会いたすぎて昨日は眠れなかったよ!!」
遠足前日の子供かっ!!
「そうですか……」
無邪気に言われてしまうと、悪い気はしないので不思議だ。