最後の恋のお相手は
「オレを雄洋って呼んで?」

そう言った日向社長……いや、雄洋さんは、なんだか寂しそうな目で訴えているようにみえた。

コクンとうなずくと、白い歯を見せて笑った。

「ほな、行こう? デートやから、手をつないでもいい?」

雄洋さんは、派手な外見で強引そうに見えるけれど、私へ細やかな気遣いをみせてくれた。お金で私を買ったのだから、好きにすればいいのに。私自身、なにをされてもいいと言う覚悟で、この関係を成立させたのだから。

手をつないで百貨店内を歩く。知り合いに会わないかとか、春日園の社員に会わないかとか、違う意味でドキドキしていた。

「郁美、好きな服のブランドは?」

「ブランド……」

いつもいわゆるファストファッションのお店で買い物をするから……。

「特にないなら、オレの趣味でもいいか?」

コクンとうなずくと、雄洋さんのお気に入りのお店に向かった。

雄洋さんは、女の子らしい、かわいい服装が好きなようで、イエスもノーもなく、次から次へと試着させられた。

ミニスカートも、ふんわりスカートも、かわいいと思っていても、私なら買わないようなものばかりだ。

「いいよ、郁美。めっちゃ似合う」

「そ、そうですか?」

「細くて綺麗な足、もっと出したらいいのに」

自分に自信のない私だけれど、雄洋さんに言われたら……。ほんの少し、自信が持てた。

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