最後の恋のお相手は
十四時ギリギリで、ほとんど利用客はいない。彼が最後の客になった。それでもやっぱり指定席に座るのには、訳があるらしい。
「今日も指定席に座ってはるなぁ。雨やのに」
最後の客にカツ丼を提供し、その背中を見送りながら、国富さんがつぶやいた。国富さんはどうやら、彼のことを知っているらしい。
「雨? 雨と指定席、なんか関係があるんですか?」
「グラウンドの見える席が落ち着くんやて」
「グラウンド?」
間の抜けた返事をすると、知らんの? と言いたげな表情で私を見た。ベテランの国富さんはだいたいの利用客を把握しているのかもしれないけれど、私にはまだそんな余裕はなかった。
「野球が好きな人やからねぇ」
野球……かぁ。たしか春日園の野球部は、社会人野球で優秀な成績を残していると聞いたことがあるけれど。
「味噌汁、おかわりもらえる?」
噂の彼が、笑顔でおかわりの要求。いつもなら、自由におかわりができるように食堂内に置いてあるのだけれど、今日はもう厨房内に片づけていた。
「あ! はい、ただいま」
慌てておかわりを用意する。突然のことに、胸の鼓動が早くなった。
「ちょっと一服してきてええか?」
厨房内で味噌汁をよそう私に、国富さんがタバコを吸う仕草を見せた。小さくうなずくと、勝手口から出て行った。
そこで、ハッと気がついた。
私、彼とふたりっきりや……!
「今日も指定席に座ってはるなぁ。雨やのに」
最後の客にカツ丼を提供し、その背中を見送りながら、国富さんがつぶやいた。国富さんはどうやら、彼のことを知っているらしい。
「雨? 雨と指定席、なんか関係があるんですか?」
「グラウンドの見える席が落ち着くんやて」
「グラウンド?」
間の抜けた返事をすると、知らんの? と言いたげな表情で私を見た。ベテランの国富さんはだいたいの利用客を把握しているのかもしれないけれど、私にはまだそんな余裕はなかった。
「野球が好きな人やからねぇ」
野球……かぁ。たしか春日園の野球部は、社会人野球で優秀な成績を残していると聞いたことがあるけれど。
「味噌汁、おかわりもらえる?」
噂の彼が、笑顔でおかわりの要求。いつもなら、自由におかわりができるように食堂内に置いてあるのだけれど、今日はもう厨房内に片づけていた。
「あ! はい、ただいま」
慌てておかわりを用意する。突然のことに、胸の鼓動が早くなった。
「ちょっと一服してきてええか?」
厨房内で味噌汁をよそう私に、国富さんがタバコを吸う仕草を見せた。小さくうなずくと、勝手口から出て行った。
そこで、ハッと気がついた。
私、彼とふたりっきりや……!