最後の恋のお相手は
腹ごしらえが済んだら、ドライブへ。助手席から、チラリと運転席を盗み見る。

口を開くと明るく、陽気な感じがするけれど、黙ると彫りの深いその横顔から哀愁が漂う。

人前では明るいキャラを演じているだけで、本当はもの静かな人、なのかも?

「郁美と話したいことがいろいろあって。なにから話そうかな?」

私の視線を感じたのか、ポツリとつぶやくと、まっすぐに前をみつめたまま、笑った。

「横浜ファンやなんて。なんでそんな嘘、ついたん?」

「えっ!」

……バレていたんや。雄洋さんは、なんでもお見通しだ。

「オレが野球好きやと知って、話題作りでもしてくれたん?」

……本当は、雄洋さんの気をひきたくて、ついた嘘……。なんて、今さら恥ずかしくて言えない。黙ってうなずいた。

「そっか。ありがとう。今度のデートは野球にしよか?」

「はい」

「ヨシ、決まった。ほな、いろいろ野球のこと、教えたるからな」

うれしそうに声を弾ませるその横顔をみつめていると、お金で繋がっているとか、釣り合わないとか、そんなことはどうでもよくなってきた。

ただ私は、雄洋さんが好きで。その笑顔が見られたら、幸せなんだと感じた。

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