最後の恋のお相手は
今日もランチタイムを忙しく過ごしていたけれど、仕事の疲れよりも、いつ雄洋さんが来るのか、今日は会えるのか、そんな楽しみが勝っていた。

注文で忙しい時間帯が過ぎると、今度は洗い物で忙しい時間帯がやってくる。

「ランチのごはん、大盛りで!」

その声にドキッとして振り返る。雄洋さんや! 飼い主の帰りを待っていた犬のように、飛び跳ねながら駆け寄ると、厨房内から顔を出した。

「い、いらっしゃいませ!」

「昨日は、どうも」

「こ、こちらこそ!」

食券を受け取る手が、緊張で震えた。昨日デートをしたのに、今さらな気もしながら。

「次の金曜日、ナイターに行くで」

え? もう誘ってもらえるの? 二度目のデートはもう少し先だと思っていたのに。自然と頬が緩むと、コクンとうなずいた。

「ヨシ。ほな、またメールする」

雄洋さんが、うれしそうな顔をするから、もしかしたら私のこと……なんて、勘違いしそうになる。残りのデートはあと四回。その間に私たち、本物のカップルになれないかな……?

……なんて。あまり期待しない方がいい。だって、もし私を好きだとしたら。

お金を払っているのに、なにもしないなんておかしい。昨日の夜、間違いなく抱かれていたはずだ。

私って魅力、ないのかなぁ。雄洋さんの背中に小さくつぶやいた。




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