最後の恋のお相手は
金曜日の朝。目が覚めてすぐにカーテンを開けると、愕然とした。

雨。しかも、かなりのザーザー降り。でも、今はまだ朝。ナイターは夜なんやから! と、自分に言い聞かせた。

忙しいランチタイムを過ぎても、雨は止むどころか、勢いを増すばかり。不安ばかりが募った。それに今日は、雄洋さんの姿がない。今夜、本当に会えるのか、さらに不安になった。

仕事が終わって、一旦、家に帰る。私は、雄洋さんと野球を観られるのなら、どこのチームだって構わないのに。今日の試合が屋外球場だったことを悔やんだ。

『雨天中止になった』

十七時を過ぎて、雄洋さんからメールが届いた。ため息をつきながら、『わかりました』と、返信をした。

『野球の代わりに食事でも』

早い返信に、胸が躍った。野球でも、食事でも、雄洋さんとデートができるのなら……。

『わかりました』

同じ『わかりました』の文章でも、全く違う気持ちでメールを返した。

『ほな、十八時に迎えに行く』

シンプルなメールでも、私はうれしかった。早く会いたくて、どうにかなりそうなくらいに。

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