最後の恋のお相手は
雄洋さんの愛車はツーシーターだから、運転手さんに車を預け、ふたりはタクシーで帰ることになった。

ふたりで後部座席に座ると、雄洋さんがそっと手を握った。

「デートは、これっきりにしよう」

手を握ってくれたから、期待をしたのに。雄洋さんの言葉は、見事に私の期待を裏切った。

「なんでですか?」

納得がいかない。野球観戦も、ビアガーデンも行っていないのに。それに、デートはまだ二回しかしていない。

「恋愛ごっこは、終わり」

そう言った雄洋さんは、私の手をギュッと握った。

「それならお金は、お返しします」

「あれは、受け取ってくれたらいい」

「納得いきません」

睨みつけるようにして、雄洋さんをみつめた。

「なんでこれっきりなんですか?」

胸の鼓動を加速させながら、強い口調で聞くと、雄洋さんが苦笑いをした。

「笑ってごまかすなんて、雄洋さんらしくない」

「……そやな」

逸らした視線をもう一度私に向けると、ひとつ、小さなため息をついた。

「今度、ふたりっきりで話をしよう」

お互い笑顔を失くしたまま、みつめ合った。雨は降り続き、タクシーの窓を冷たく濡らしていた。

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