最後の恋のお相手は
初めての相手は、塾の講師。大学では、准教授に遊ばれ、社会人になってからは、二股されたり、浮気されたり。

ロクな男に巡り会えない私。今回も、見た目は派手な、年上であろう男性が気になる。

でも! 今回は、大丈夫な気がする。春日園といえば、日本を代表する大手企業と言っても過言ではない。そんな企業の社員、もしくはその関連企業の社員と思われる男性なんやから。

外見だけで決めるのは、よくないことで。まずは、お近づきになるだけでも。

「お待たせしました!」

いろいろなことで頭の中をいっぱいにしたまま、それでも笑顔は忘れずに味噌汁を差し出した。

「ありがとう」

白い歯を見せながら、笑顔を返した彼と、目が合った。

「野球!」

焦った私の口から咄嗟に言葉が飛び出した。さっき、聞いたばかりの情報が、口をついて出たのだった。

さすがにこれには彼も驚いたようで、真顔で私をみつめたまま、ポカンと口を開けた。

「あ、もしかして、野球好き?」

しばらくの沈黙があってから、彼は笑顔で言った。そのとき私は、ふと気がついた。日サロのようにこんがりとした日焼け。もしかしたら彼は野球部の部員、もしくは監督さんなのかも。

「はい!」

そんな人に対して『野球に興味はない』なんて言えるはずがなく、笑顔で返事をした。

「へぇー。プロ野球、どこのファン?」

「横浜です」

話を合わせるために、塾の講師が好きだったチームの名前を口にした。当時の選手のことはわかるけれど、今は全く知らない。


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