最後の恋のお相手は
しばらくすると、コーヒーの香ばしい香りが部屋中を包みこんだ。雄洋さんが私にいれてくれたコーヒーは、スティックシュガーと、ミルクも忘れずに添えられていた。
「ありがとうございます」
雄洋さんの心遣いがうれしくて、胸に沁みた。雄洋さんは、何も言わずにブラックのまま、コーヒーを口にした。
「今日は、郁美に話したいことがあって」
しばらく沈黙した後、やっと雄洋さんが口を開いた。
「はい」
澄み切ったコーヒーの香りが一変、重い空気が部屋中を包みこんだ。
「オレが、郁美を二百万円で買った理由」
視線を雄洋さんに向けると、雄洋さんもじっと私を見ていた。
「自分の会社の社員が、たとえアルバイトやったとしても、副業で夜の仕事をしているやなんて……正直、嫌やった」
……そうか。そういう理由やから、私に大金を支払いながら、抱いてくれへんかったんや。
やっぱり、愛はなかったんや。わかってはいたけれど、ショックやった。
「夜の仕事をしている理由が『専門学校に通いたい』っていう、まともな理由やったから、二百万円払ってでも辞めさせたかったんや」
「ありがとうございます。おかげで私、夜の仕事も辞められましたし、専門学校にも通えそうです」
言葉をかぶせるように早口で言うと、立ち上がった。
「帰ります」
「待って、郁美。まだ話は済んでない」
「お金のこと、ですか?」
「え?」
私の質問に、雄洋さんは眉をひそめた。
「デート二回しかしていないのに、二百万円も……もらいすぎですから、お返しします」
「郁美」
困惑した表情を浮かべながら、雄洋さんが私をみつめた。そんな目で、見ないでほしい。私と雄洋さんの間にあるのは、お金だけなんやから。
「ありがとうございます」
雄洋さんの心遣いがうれしくて、胸に沁みた。雄洋さんは、何も言わずにブラックのまま、コーヒーを口にした。
「今日は、郁美に話したいことがあって」
しばらく沈黙した後、やっと雄洋さんが口を開いた。
「はい」
澄み切ったコーヒーの香りが一変、重い空気が部屋中を包みこんだ。
「オレが、郁美を二百万円で買った理由」
視線を雄洋さんに向けると、雄洋さんもじっと私を見ていた。
「自分の会社の社員が、たとえアルバイトやったとしても、副業で夜の仕事をしているやなんて……正直、嫌やった」
……そうか。そういう理由やから、私に大金を支払いながら、抱いてくれへんかったんや。
やっぱり、愛はなかったんや。わかってはいたけれど、ショックやった。
「夜の仕事をしている理由が『専門学校に通いたい』っていう、まともな理由やったから、二百万円払ってでも辞めさせたかったんや」
「ありがとうございます。おかげで私、夜の仕事も辞められましたし、専門学校にも通えそうです」
言葉をかぶせるように早口で言うと、立ち上がった。
「帰ります」
「待って、郁美。まだ話は済んでない」
「お金のこと、ですか?」
「え?」
私の質問に、雄洋さんは眉をひそめた。
「デート二回しかしていないのに、二百万円も……もらいすぎですから、お返しします」
「郁美」
困惑した表情を浮かべながら、雄洋さんが私をみつめた。そんな目で、見ないでほしい。私と雄洋さんの間にあるのは、お金だけなんやから。