最後の恋のお相手は
②
「車で送るわ」
「日向社長」
言葉を遮るようにして、コーヒーカップをキッチンに置いて戻ってきた日向社長に呼びかけた。『雄洋さん』と呼ばなかったのは、コーヒーを飲み干した瞬間に関係は終わったと思ったから。
日向社長は黙ったまま、鋭い視線を私に向けた。
「短い間でしたが、日向社長の疑似恋愛の相手になれて、良かったです」
『疑似恋愛』を強調したのは、日向社長に恋愛感情がなかったのに、情熱的なキスをしてきたのが悔しかったから。本当は、日向社長が好きだけれど、その気持ちを隠したかったから。
「疑似恋愛……か」
日向社長がボソリとつぶやいたかと思うと、私に歩み寄ってきた。
どうしよう。素直に『好き』と伝えようか? でも、玉の輿を狙う、いやらしい女だと思われるのが怖かった。
「日向社長は、疑似恋愛やなかったんですか?」
『恋愛ごっこ』と言っていたから、疑似恋愛やとわかっていたのに。質問を質問で返した。
「オレは、さっきも言うた通り、夢を叶えてほしくて、郁美に投資しただけや」
あの日のキスは、魔がさしただけですか? そんなふうに聞くこともできずにうつむいた。
「最初は、そのつもりやったんや」
うつむいた顔をあげると、日向社長が困惑した表情を浮かべていた。
「でも、郁美が……かわいくて」
「私よりかわいい女は、星の数ほど」
そこまで言った私を黙らせるかのように、日向社長がギュッと強く抱きしめた。
「日向社長」
言葉を遮るようにして、コーヒーカップをキッチンに置いて戻ってきた日向社長に呼びかけた。『雄洋さん』と呼ばなかったのは、コーヒーを飲み干した瞬間に関係は終わったと思ったから。
日向社長は黙ったまま、鋭い視線を私に向けた。
「短い間でしたが、日向社長の疑似恋愛の相手になれて、良かったです」
『疑似恋愛』を強調したのは、日向社長に恋愛感情がなかったのに、情熱的なキスをしてきたのが悔しかったから。本当は、日向社長が好きだけれど、その気持ちを隠したかったから。
「疑似恋愛……か」
日向社長がボソリとつぶやいたかと思うと、私に歩み寄ってきた。
どうしよう。素直に『好き』と伝えようか? でも、玉の輿を狙う、いやらしい女だと思われるのが怖かった。
「日向社長は、疑似恋愛やなかったんですか?」
『恋愛ごっこ』と言っていたから、疑似恋愛やとわかっていたのに。質問を質問で返した。
「オレは、さっきも言うた通り、夢を叶えてほしくて、郁美に投資しただけや」
あの日のキスは、魔がさしただけですか? そんなふうに聞くこともできずにうつむいた。
「最初は、そのつもりやったんや」
うつむいた顔をあげると、日向社長が困惑した表情を浮かべていた。
「でも、郁美が……かわいくて」
「私よりかわいい女は、星の数ほど」
そこまで言った私を黙らせるかのように、日向社長がギュッと強く抱きしめた。