最後の恋のお相手は

切なくもあり、日向社長に会える日がうれしくもあるという、複雑な心境を抱えた日々が三ヶ月ほど続いた。

短い秋が終わり、鍋物が恋しくなる十一月に入った。

「ランチ、頼む。ごはん、大盛りで」

ランチタイムのピークが終わりに近づく十三時過ぎ、日向社長がぶっきらぼうに注文をした。

「はい、ありがとうございます」

急いでいるのか、はたまたご機嫌ナナメなのか。日向社長にしては、珍しい口調だ。

なんだか利用している社員まで巻き込む、ピリピリムード。この時間帯の利用者は少ないけれど、それでも日向社長の不機嫌さを皆が感じ取っているのだから、相当のもんだ。

「ランチ、お待たせしました!」

それをあえて一蹴するかのように、明るく、元気に言った。

「あ、ありがとう」

それなのに、日向社長は……。笑顔も見せないまま、ボソリと言った。

なんだか、おかしいな。そう思いながら、その背中を見送った。



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