最後の恋のお相手は
「今度の日曜日、十四時、そちらのホテルのラウンジで、日向社長がお見合いをされます」

「えっ!?」

名刺から、田野さんに視線を向けると、優しく微笑んだ。

「日向社長、あなたの話ばかりしていたのに……話をしなくなったと思ったら突然、『見合いをする』と言い出して」

「でも、私は……」

日向社長のお見合いを、やめさせることはできない。日向社長の意思でお見合いを決めたのならば、なおさら。

「日向社長に何か聞いたわけでも、言われたわけでもありません。ただ、おせっかいがすぎる秘書が、あなたにお知らせしただけです」

田野さんは、私と日向社長の本当の関係は知らないけれど、なんとなく、親しくしていたのは察しているようだ。日向社長が私を話題にしなくなり、さらには『見合いをする』と言い出したことから、ふたりの関係が気になった。大凡、そんなところ……かな?

「私の勘がはずれていたのなら、聞かなかったことにしてください」

スッと立ち上がると、軽く会釈をした。

「あ、ありがとうございました!」

私も慌てて立ち上がると、名刺を握りしめたまま、立ち去る背中に会釈をした。

「社長秘書が、何の用やったんや?」

タイミングよく戻ってきた国富さんが、遠ざかる背中をみつめながら聞いた。

「大した用ではないです。でも、私にとっては重要な話でした」

矛盾したことを言う私を見て、国富さんが首をかしげた。

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