最後の恋のお相手は

②

日向社長が、私のためにコーヒーを注文してくれた。あたふたしていたのは一変、今は落ち着きを取り戻し、いつものように余裕の笑みを浮かべていた。

「ほな、質問をかえよう。オレのこと、どう思っている？」

あ……。それなら答えやすい、かも。コーヒーにスティックシュガーとミルクを入れると、クルクルとかき混ぜながら、頭の中を整理した。

「社長って感じがしなくて、親しみやすいです」

「あー。最初は、社長やと気づいてなかったもんな。……で？」

『……で？』と言われても。なんて答えればいいやろう……か。

「私の夢を叶えるために、お力をいただき、助かりました」

「あー。オレもオイシイ思い、させてもらったし、な」

『オイシイ思い』って？ ああ！ あの日のアレのことか。私も初めてあんなに感じたし……。つい、頬が緩んだ。

「今、思い出し笑い、したやろ？」

ずばり指摘され、一瞬で身体中が火照ると、耳まで真っ赤になった。

「ここじゃ、話しづらいな」

日向社長が急に立ち上がり、席を外した。どうしたらいいのかわからない私は、ポカンと口を開けたまま、その背中をみつめていた。

しばらくすると、日向社長が会計を済ませて戻ってきた。

「うちでゆっくり話をしよか？」


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