最後の恋のお相手は
「キララちゃん、なんでこの店で働いているん?」
日向さんがグラスを手に、私に質問をしてきた。そんなこと、聞かれるとは……。ふたりっきりになったから、適当に話題作りをしてくれたんやろうけれど。
「調理師になりたくて、学費を稼いでいるんです」
ホンマのこと、言ってもいいかな? まぁ、常連さんに連れられて来たから、好きで来たんちゃうやろうし。キララちゃんが日向さんに会うことはもう二度とないやろう。そう思いながら、本当のことを話した。
「そっか。偉いなぁ。いくらくらいかかるもんなん?」
「私は昼間、別の仕事をしているので、夜間の専門学校に行きたいんですが、だいたい百五十万円くらい、かな?」
「ふぅん。学校に行くために、好きやない仕事、しているんや?」
なんで日向さん、そんなことを聞くんやろ? 『好きやない仕事』やなんて。私がイヤイヤ働いているように見えた?
「このお店は好きですよ。みんな仲良しですし、お客さんもいい方ばかりで」
「でも、夜の仕事なんてしたくないのが本音やんな?」
小さく、うなずいてしまった。日向さんが真顔で、鋭い視線を私に向けたから、嘘はつけなかった。
そんな私を見て、日向さんは黙ってうなずいた。今度は、笑顔を見せながら。
「日向さん、そろそろ終電が近いですし」
そのタイミングで常連さんが戻ってきた。トイレのついでに会計を済ませたようだった。
「そうですね。ありがとうございました」
日向さんが腕時計に視線を送ると、立ち上がった。他の店員が、先に日向さんを出口に案内した。
「キララちゃん、ごめんやで。日向さんは絶対、終電で帰らはる人やから」
長くいられなかった常連さんが小さな声で私に謝って店を出た。
日向さんがグラスを手に、私に質問をしてきた。そんなこと、聞かれるとは……。ふたりっきりになったから、適当に話題作りをしてくれたんやろうけれど。
「調理師になりたくて、学費を稼いでいるんです」
ホンマのこと、言ってもいいかな? まぁ、常連さんに連れられて来たから、好きで来たんちゃうやろうし。キララちゃんが日向さんに会うことはもう二度とないやろう。そう思いながら、本当のことを話した。
「そっか。偉いなぁ。いくらくらいかかるもんなん?」
「私は昼間、別の仕事をしているので、夜間の専門学校に行きたいんですが、だいたい百五十万円くらい、かな?」
「ふぅん。学校に行くために、好きやない仕事、しているんや?」
なんで日向さん、そんなことを聞くんやろ? 『好きやない仕事』やなんて。私がイヤイヤ働いているように見えた?
「このお店は好きですよ。みんな仲良しですし、お客さんもいい方ばかりで」
「でも、夜の仕事なんてしたくないのが本音やんな?」
小さく、うなずいてしまった。日向さんが真顔で、鋭い視線を私に向けたから、嘘はつけなかった。
そんな私を見て、日向さんは黙ってうなずいた。今度は、笑顔を見せながら。
「日向さん、そろそろ終電が近いですし」
そのタイミングで常連さんが戻ってきた。トイレのついでに会計を済ませたようだった。
「そうですね。ありがとうございました」
日向さんが腕時計に視線を送ると、立ち上がった。他の店員が、先に日向さんを出口に案内した。
「キララちゃん、ごめんやで。日向さんは絶対、終電で帰らはる人やから」
長くいられなかった常連さんが小さな声で私に謝って店を出た。