わたし、結婚するんですか?
「そうか、お前は社長の従妹だったのか。
そりゃあ、社長に申し訳ないことしたな」
章浩と別れ、廊下を歩きながら、遥久が言ってくる。
……どうやら、逆だったようだ。
遥久は章浩に恨みがあって、自分に近づいたのかと思っていたら。
自分と章浩が仲良く話しているところを盗み見て、章浩を敵視していたようなのだ。
「しかし、そうか。
お前は社長の従妹なのか」
そう繰り返したあとで、遥久は、ふと気づいたように、
「従妹?
結婚できるじゃないかっ」
と叫び出した。
なにを怒ってるんだ、この人は。
「社長は既婚者ですよ……」
と言ってみたのだが、遥久は、
「お前がいいと言って離婚するかもしれんだろ」
と言ってくる。
すみませんが、私はそんなにモテません……と思う洸の横で、遥久は、
「困ったな」
と呟いている。