わたし、結婚するんですか?
「思い出すんだ、洸。
 お前が好きだったのは、俺だ。

 その証拠に、お袋さんに紹介してくれるって言ったし。

 キスしても逃げなかった!」

 ……確かに、自分が、母親に会わせたい人が居る、と言ったのは事実のようだ。

 だが、それが葉山だったのかはわからない。

 彼がその話を知っていて、遥久が知らなかったのは確かだが。

 しかし、キスしても逃げなかったってなんだ。

 したのか……?

 葉山とキスした記憶はなく。

 ……いや、遥久ともないのだが。

 いつの間にそんなことに、と固まっている洸に向かい、葉山はたたみかけるように言ってきた。

「してみよう、洸」

「は?」

「俺とキスしたら、思い出すかもしれないじゃないか」

 いやいやいや、此処、会社なんですけどっ!?

 と思ったが、葉山は、洸の両の手首を握りしめて離さない。
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