わたし、結婚するんですか?
 




 なんだろうな。
 なにか気分が晴れない。

 気にかかる。

 夕方、会社を出た洸は、なにかが胸に引っかかり、釈然としないまま、街をウロウロしていた。

 こんな黄昏時は、余計寂しさが増すよなー。

 などと思いながら、ふらりと入ったペットショップで、猫の遊び道具を眺めた。

 キャットタワーもあったが、遥久の買ってきてくれたのが、一番チャトランに似合っている気がした。

 ……おとなしく帰って、チャトランと遊ぼう。

 そう思ったが、やっぱり、どんより気が重い。

 何故?

 どうして?

 なにが引っかかってるんだろうな。

 うーむ、と思いながら、マンションの前の道を歩いていたとき、視界になにか入った気がして、後退する。

 例のおじいさんの喫茶店の前だった。

 見ると、窓際の席に遥久が居た。

 なにかを飲みながらこちらを見ている。

 ひっ、また目つきが鋭いっ、と思いながらも、その顔を見た瞬間、ほっとしている自分が居た。
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