わたし、結婚するんですか?
 




 部屋中にスパイシーな香りの充満する中。

 遥久と二人、小さなローテーブルを囲んで、いたたぎます、と洸は手を合わせた。

 いい香りだ。

 さすが一から調合したこだわりのカレー。

 でも、こういうのって意外とまずかったりするんだよな、と思ったのだが、遥久の作ったカレーはちゃんと美味しかった。

「お前は辛いのが嫌いだから、これはあまり辛くはしていない」
と究極のカレーを作ると言ったわりには、こちらに合わせてくれたらしい遥久がそう言ってきた。

 そうか。
 私のそういうところも知ってるんだ……と不思議に思う。

 まあ、ちょっと一緒に居たら、すぐにわかることではあるのだけれど。

 まだそう疑いながらも、小皿にそれぞれ綺麗に盛られた福神漬けとらっきょうを洸は見る。

 このらっきょう見て、今日はカレー、と思ったんだな。

 意外に単純で可愛らしい、と思いながら、

「美味しいです。
 私、福神漬け大好きなんです」
とさっき、スーパーで買ってきたばかりの福神漬けを見て、うっかり言ってしまい、

「……俺のカレーとじいさんのらっきょう、全否定か」
と遥久に言われた。
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