わたし、結婚するんですか?
 





 結局、スケジュール帳は見つからないまま。

 ……というか、そもそも、たいしたこと書いてなかった気がするので、探さないまま、洸は日曜日を迎えた。

 設計士とやらの許に行く日だ。

 遥久の車で設計事務所へと向かう。

 ソファのような座り心地の遥久の車の座席はなんだか落ち着かず、ゴソゴソしてしまい、
「お前は、最近の座ってられない小学生か」
と叱られた。

 この人、絶対、私の彼氏じゃないと思う。

 ダメ、ゼッタイ、なポスターくらいの勢いで、洸はそう思う。

 運転席と助手席のこの距離の近さだけで、心臓がバクバクするし。

 結婚もしようかという彼氏彼女なら、もう車の助手席なんて慣れたもので、
『飴でも食べる?』
とか笑って差し出したり、

『この曲いいね』
とか軽やかに話したりするものではないだろうか。

 ……飴持ってないし。

 曲かかってないし。

 それこそ、授業中のようにしんとしている。
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