わたし、結婚するんですか?
 今も。

 記憶を失う、その前も――。

 でも、なにも思い出せないし。

 思い出せないことが、なんだか今は物凄く怖いんです。

 此処から一瞬にして、真っ暗な場所に叩き落されそうな気がして。

 遥久は、もう一度、そんなことを思う洸の上に乗り、やさしく口づけてくる。

 幸せすぎて怖いというのではなく、本当になにかが怖い。

 そう思いながら、洸は意外に筋肉質な遥久の腕を強くつかんでいた。

 いつまでも此処で、こうしていて欲しいと望むように。






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