わたし、結婚するんですか?
エレベーターに乗った遥久は鞄の中に入れていたあの引き裂かれたスケジュール帳を見る。
入れておかない方がいいとわかっていた。
なんの弾みで洸が見てしまうかわからないからだ。
だけど、これを捨ててしまえないのは、自分の中の良心か。
その手帳にある番号を見ているときに、ふと、昨夜、洸に言った自分のセリフを思い出していた。
『お前の記憶の秘密を知るかもしれない浜崎を俺が殺すと?
お前、俺にとって、自分がそれほどの価値があると……』
時間が早いせいか、誰も乗っては来なかったエレベーターで遥久は思う。
価値はあるよな、と。
「……殺しておくかな。
すべてがバレてしまう前に」
そう呟いたあとで、鞄の中にそれを放り、開いた扉から外に出た。