わたし、結婚するんですか？
「ねえ、葉山。
　私があんたをお母さんに恋人として紹介するって言ったっていうの、嘘でしょ」
とさりげなく、世間話をするように言うと、葉山は、こちらを見下ろしながら、

「嘘だが、それがなにか？」
と威嚇するように言ってきた。

　どんなキレ方だ……。

「お前が悠木課長に助けられたとか言うから、焦ってちょっと言ってみたんだが。

　お前、本当に記憶がないみたいで、バレなかったから。

　仕事の関係で紹介してくれって言っただけだよ。

　でも、それも忘れてたんだろ」

　やっぱ、酔っ払いに約束取り付けても無駄だな、と投げやりに言ってくる。

「ごめんごめん。
　あの、お母さん、今、帰ってるから、近いうちに会わせるよ」
と謝った。

　謝っておいて、待て、よく考えたら、私が騙されたのに、なんで謝ってるんだろうな、と思わないこともなかったが。

「あ、浜崎……」

　そのとき、地下から階段を上がってくる同期の浜崎朋美が見えた。
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