わたし、結婚するんですか?
「なんで、逃げるの」

 浜崎は洸を見ないまま、
「あんたと顔合わせたくないからよ」
と言った。

 そのうち、階段の上の方で声がし始める。

「洸。
 あそこに行こう」
と浜崎の腕をつかんだまま、遥久が言う。

「あそこ?」

「……人目につかない、例のところだ」
という遥久の、いつもなんだか不必要なまでに凄みのある口調に、浜崎が怯える。

「あっ、あんたたち!
 私をどうしようって言うのよっ」
と叫ぶ浜崎の腕を遥久が後ろに捻り、洸がその口を塞いだ。

 そのまま、渡り廊下の倉庫へと引きずっていく。





< 239 / 368 >

この作品をシェア

pagetop