わたし、結婚するんですか?
「ほらな、洸。
 何処に人目があるかわかんないだろ」
と遥久に言われ、

「そうですねえ」
と洸も答えるが。

 でも、それで、なんで、浜崎が怒っているのかわかんないな、と思っていた。

 濡れ衣だが、愛人とかいう存在が嫌いだとか? と思っていると、遥久が、
「それでなんだ。
 お前は洸が社長の愛人だと思って、洸を三階から突き落としたのか」
と訊いている。

「突き落としてないわよっ。
 私が洸に社長の愛人なのかと訊いたら、洸は、ないない、って言ったあと、手を打ちながら、大笑いして、そり返り過ぎて、勝手に落ちたのよっ」

「……目に浮かぶようだな、洸」

 さもありなん、と呆れたように遥久が言う。

 はい、課長。
 残念ながら、私も目に浮かぶようです……と思いながら、その言葉を聞いていた。

 如何にもやりそうだ、と自分でも思ってしまう。

「なんで、洸なのよっ。
 社長のような頼りない人には、もっとしっかりした女が合うと思うのにっ」

 そんな浜崎の叫びに、洸は、ん? と思った。
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