わたし、結婚するんですか?
「じゃあ、社長にお前の気持ちは伝えておいてやるから、もう洸には構うな」
と解放する浜崎に向かい、遥久が言っていた。
「……いや、伝えちゃ駄目ですよ」
おにーちゃんちに嵐を呼ぶつもりですか、と思いながら、ドアを開け、去っていく浜崎を洸は見送る。
「しかし、情けない人間が好きって奴も居るんだな。
ああ、俺もか」
となんの気なしにという感じで、遥久が呟く。
いや、情けないじゃなくて、頼りないですし。
あの、課長、本当に私のこと、好きですか……?
と思っていると、遥久はいきなり、こちらを向き、
「洸、ごめんなさいは?」
と言ってきた。
「えっ?」
「誰が黒幕だ。
お前が三階から落ちたのにも、記憶喪失になったことにも俺は関係なかったじゃないか」
「ご、ごめんなさ――」
と謝りかけたが、待てよ、と思う。
よく考えたら、三階から落下した原因以外、なにも解決してなくないか?
だが、
「かちょ」
と言い終わらないうちに、抱き締められる。