わたし、結婚するんですか?
「それが葉山の記憶も飛んでるみたいなんです」
とうっかり言って、葉山? と眉をひそめられた。

「あのお前のストーカーか」

 いや、ストーキングされた記憶はないんですけど。

 さっき、課長の前で腕をつかまれただけで、と思っていると、
「あいつには近づくなよ」
と遥久は警告してくる。

「何故ですか?」
と訊くと、

「男前で仕事が出来て、女子社員に人気があるからだ」
と言う。

 ……はあ、と思っていると、
「ほら」
と箱からヨーグレットを出してきて、ひとつ、くれた。

 思わず、両手で受け取り、
「あ、ありがとうございます」
と言うと、うん、と言って、そのまま行ってしまった。

 な……なんなんだ、あの人。

 手のひらにつるんとしているが、ちょっと粉っぽいヨーグレットの感触を感じながら、そのままぼんやりしていた。

 わけがわからない……。

 そう思いながらも、あとでひとりで食べてみたが、ヨーグレットは甘くて、なんだか気持ちが落ち着いた。










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