わたし、結婚するんですか?
 



 部長と別れ、廊下を歩きながら、
「入江さんたちにも連絡しなくちゃですね。
 ところで、課長はなんで、式場がイグレシアだって知らなかったんですか?」
と洸が訊くと、

「いや、お前は言ったと思うんだが。
 式場が取れたとお前が言った瞬間、急に結婚が早まったことで、舞い上がってしまって、聞いてなかったんだ」
と遥久は言ってくる。

「あのー、舞い上がってるのを顔に出してください」

 わかりにくいではないですか。

 当時のことを思い出してみても、遥久が舞い上がっていたようには思えなかった。

 口ではペラペラ言うのだが、表情に表れにくいのも不信感を呼び込んでいた原因のひとつだろう。

 そのあと、一応、章浩にも報告しよう、と思い、社長室まで行くと、何故か、手前の秘書室に母が居た。

 章浩も一緒で、酒木たちと話している。

「おかーさん?
 上海に帰ったんじゃなかったのっ?」
と言うと、

「いやあね。
 あんたたちが心配で帰りそびれたのよー」
と相変わらず派手なエリカが笑って言ってくる。
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