わたし、結婚するんですか?
 章浩と三人で話すのを聞いていたエリカが、
「そういえば、記憶戻っても、『課長』なのね?」
と洸の呼び方にケチをつけて言ってくる。

「いいの? 遥久さん」
と言うエリカに、

 ……いや、だから、お母さんが気安く呼ばないでください、と思っていると、遥久は珍しく、少し照れ、

「……恥ずかしいじゃないですか、遥久さんなんて呼ばれたら。
 嬉しくて卒倒しそうなのでいいです」
と言ってきた。

「やだ、悠木課長にこんな一面があったとわ」

 意外、可愛いですね、と酒木も驚いている。

 いや、私もですよ……と思っていると、章浩が口を挟んできた。

「まあ、結局、落ち着くんだろうなとは思っていたよ」
と言って。

「此処に二人で来たときも、なんだかんだで、洸は俺の横には座らず、距離を開けても、悠木課長の側に座ってたじゃないか」

 いや、普通、会社で社長の横に座りませんよね、と思ったが。

 まあ、最初から、いつか地固まることを考えて、拗ねていただけなのかもな、と自分でもちょっと思っていた。





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