わたし、結婚するんですか?
「いや、同期会ですよ。
 それに、葉山のことは、もう気にならなくなったって、前、言ったじゃないですかーっ」
と反論すると、

「俺は簡単に前言撤回するぞ」
と本の上からこちらを見て言ってくる。

 駄目な人だ……。

 でも、困ったことに、やっぱり、この人が好きだな、と思ってしまう。

 遥久の側に行き、ソファに手をかけると、彼を見つめる。

 なんだ? と遥久がこちらを見た。

「ずっと思ってました。

 例え、私が好きだったのも、結婚しようと決めて、式場をとったのも、課長じゃないとしても、今の私はこの人が好きなのかもしれないと。

 例え、貴方に策略があったり、どうしようもない悪人で私を騙しているとしても――」

「おいこら、待て」

 誰がだ、と遥久は本を伏せ、身を起こした。

「それでも、私は貴方が好きです」
と言うと、遥久は洸を見つめ、ソファの上の洸の手に触れてきた。

 洸の薬指には指輪があった。

 あの日、遥久が店で受けていた電話は、洸に内緒で頼んでいた指輪が入ったという電話だったのだ。
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