わたし、結婚するんですか?
「若気の至りで告白したことがあるが、綺麗に無視されたと言っていた。

 まあ、お前のことだから、気づいてなかったんだろうと言っていたが」

 はい、まるきり……。

 まあ、気づかなくてよかった、と思っていた。

 おにーちゃんのことは嫌いではないから。

 そこで気づいて頷いていたら、おにーちゃんのあの可愛いお嫁さんも来ていないし、洸ちゃん洸ちゃんと懐いてくれる子どもたちも生まれていない。

 そして、なにより、こうして、課長と出会うこともなかったのだろうから。

「だから、大事にしてやってくれと言われたぞ」
と言って、遥久は軽くこめかみにキスしてくる。

「俺は若気でも至ってもいないが、お前が好きだ。
 大好きだ。

 こんなおかしな女なのに」

「いや、おかしいのは貴方ですよ、帰ってください」
と言ったが、遥久はぶつかるほど額を寄せてくると、洸の瞳を見つめる。
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