わたし、結婚するんですか?
番外編 お前、結婚するんだぞ
朝の給湯室。
後片付けをしながら、ひとりぼんやりしていた洸は、夕べ読んだ雑誌に出ていたウエディングドレスのことを考えていた。
ああ、そろそろ決めなくちゃなー。
式も近いし。
でも、迷ってる間がまた楽しいんだよなー。
そんなことを考えながら、拭いたお盆を冷蔵庫の上に置こうと少し向きを変えた洸は、いつの間にか真横に人が立っていたのに、気がついた。
ぎゃーっ、と絞め殺されたニワトリのような悲鳴を上げかけると、
「落ち着け」
と言われる。
いや、今、貴方が驚かせたんですよねっ、と思う洸の前に、遥久が立っていた。
手には、また、薬っぽいものを載せている。
「かっ、課長~っ。
せめて、気配はさせて来てください~っ」
またも、人事の人間にあるまじきマヌケな悲鳴を上げかけた洸は遥久にそう訴えたが、遥久は、
「水をくれ」
とだけ言ってくる。
は、はい、と急いでグラスに水をくみ、振り向いたあとで、洸はその手のひらにあるものをマジマジと見た。