わたし、結婚するんですか?
 




 洸が帰る時間になる頃、遥久は、チラと給湯室の方を見た。

 洸は居るだろうか。

 だが、他の女子社員も一緒だったりしたら、覗いたら、なにを言われるかわからないしなー。

 というか、それ以前に、今朝、給湯室までわざわざ小細工を利かせて会いに言ったときも、洸は阿呆なことを言うばかりで、特に嬉しそうでもなかったしな。

 なんだか自分ばかりが一生懸命な気がしてきて、ちょっと腹立たしい気分だ。

 今まで、ずっと逆だったのに。

 どの女も一生懸命なにかやってきていたのだが、特に心は動かなかったし、話を聞いてもやらなかった。

 ……すまん。

 と心の中で謝ったあとで、

 立派に反省もできるようになった。

 洸と出会ってから、俺は、どんどんいい人になっていっている気がするぞ、と勝手に洸に感謝する。

 まあ、おそらく、洸が聞いていたら、
「……何処がですか?」
と言ってくるとこだろうが。

 そのとき、階段の方に洸が見えた。

 ……洸っ、と思ったが、先程の反省もあり、とりあえず、遠巻きに眺めることにする。
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