わたし、結婚するんですか?
 




 そもそも、なんであんなこと言ったんだろうな。

 呑み会の帰り。

 仕事はできなくもないが、いつも、おいっ、というところでやらかすので、使えないやつだと思っていた津田洸と一緒になった。

 普段は自分の顔を見ると、緊張して、あまり話さない洸が、酒が入っているせいか、よく話しかけてきた。

「さっきのお店、美味しかったですねー、課長」

 そうかそうか、よかったな。

 あまりそちらを見ないようにして、遥久は相槌を打つ。

 悪い病気が出ないようにだ。

 使えない奴だし、自分の前に出ると、打って変わって態度の硬い洸だが、ルックスは結構好みだったからだ。

 会社で面倒は起こしたくない。

 盛田の、
『先輩、いつか刺されますよ~』
という呪いのような言葉を思い出しながら二人で歩いていたのだが。

 ちょっと駅までの距離が長過ぎた。
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