わたし、結婚するんですか?
 こちらも酒が入っていたせいだろう。

 話の流れで、いつの間にか、洸の目を見て言っていた。

「じゃあ、俺にキスしてみろ」

 絶対しないだろうな、と思いながら、笑って言ったのだが、自分を見上げる洸は悪戯っぽく笑ったあとで、子どもにするように軽く唇に触れてきた。

 生まれて初めてのときだって、そんな風にはならなかったのに。

 何故か、身動きできずに、固まってしまう。

「じゃ、課長。
 行きましょうーっ。

 そろそろ終電ですよーっ」
とする前と変わらぬテンションで言い、洸は先に歩き出す。

 その後ろ姿を見ながら、マヌケなことに、そこにぼんやり突っ立っていた。





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