わたし、結婚するんですか?
 




 だが、小雨の降る帰り道。

 みゃーみゃー悲しげに鳴いてはウロウロしている仔猫と洸に出会ってしまった。

 急に降り出した雨に傘を持っていなかったらしい洸は、駅へと走っていたようなのに、しゃがんで仔猫をかまい始めた。

 濡れるだろうがっ、莫迦者っ、と歩みをスローにしながら、洸の様子を窺う。

 洸が仔猫を抱き上げた。

 やめろ、猫とか拾うなヤンキーかっ。

 昔、従姉の少女漫画で読んだところによると、雨の中、仔猫を拾うヤンキーを見ると、その意外なやさしさにやられて、女子は惚れてしまうようだった。

 だが、俺は女じゃないし。

 洸はヤンキーじゃないうえに、普段からやさしい。

 なにも意外性はないし、惚れる要素もないはずだっ!

 だが、そう思いながらも、つい、立ち止まり、洸を見ていると、子どもとお母さんがやってきて、猫を受け取り、洸にペコペコ頭を下げていった。

 どうやら、迷子の飼い猫だったらしい。

 ああっ。
 笑って手を振りながらも、寂しそうだっ。
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