わたし、結婚するんですか?
 




 だが、いざ、拾おうとすると、なかなか仔猫は現れなかった。

 何故だっ。

 探していないときは、あんなに遭遇するのにっ!
と遥久は苦悩する。

 ようやく、見つけたこの状況を打開する方法が消えそうになり、焦った遥久は、結局、ペットショップに行った。

 愛らしく、立派な毛並みの猫を見ながら、それを洸に手渡す自分を妄想する。

「拾ったんだ」

 いや、無理がある……。

 腕を組み、真剣な表情で猫たちを眺めていると、他の猫は何故か警戒して近づいてこなかったが、ガラス張りの小部屋で遊んでいる仔猫だけがこちらを見ていた。

 ふわふわの白と淡いベージュの毛の猫だ。

 まだ赤ちゃんのようで、小さな毛玉に見える。

 やけに足が短く、よちよち歩くその仔猫は、くるりとした黒い瞳でこちらを見上げ、なー……と鳴いた。

 何故だろう。

 洸を思わせる――。
< 336 / 368 >

この作品をシェア

pagetop