わたし、結婚するんですか?
 



 入り口に立つ遥久を見た途端、入江が高らかに宣言した。

「津田様、もしや、先程からお話の方はこの方ですか?

 この方なら、ストーカーではないですよ」

 初対面で何故、言い切る? と思っていると、入江が言う。

「こんなに美しいストーカーは居ません」

 いや……顔で決めるのはどうかと……。

 っていうか、ストーカーって意外とこういう人の方が多い気がするのだが。

 まさか、自分が振られるなんて、ありえない、というスタンスで生きているので、振られたショックで。

 いやいや、そんな莫迦な、ウソだろう、と信じず、ストーカーになったりするのでは。

 そんなことをいろいろ考えていた洸は側に来た遥久を見たまま、思わず、

「実は私が課長を振ったとか?」
と呟いて、

「誰がだ?
 お前がか?」
と言われる。

「お前ごときがか?」
という幻聴が聞こえたのだが、気のせいだろうか……。




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