わたし、結婚するんですか?
「大変ですね」

 その、人様の一大事を毎日扱っているんだから、神経すり減らしてるんだろうな、と思って言うと、遥久は、

「お前、なに、男前だと思って、色目使ってんだ」
と言ってくる。

「ええっ?
 使ってませんよ。

 お仕事大変そうだな、と思って」
と反論すると、

「俺も仕事は大変だ」
と言ってくる。

 なんで張り合ってくるんだ……、子どもか。

 入江が何故か微笑ましそうにこちらを見て笑い、小声で教えてくれた。

「でも、たまにいらっしゃるんですよ。
 新郎さんより、佐野さんの方がいいとか言い出す人。

 まあ、ほとんどは冗談なんですけどね」
 
 そのほとんどでない部分が気になるんだが……、と思っていると、入江は、

「こちらの新郎さんくらい格好よかったら、そんなこともないでしょうけどね」
と笑って言ってくる。
< 84 / 368 >

この作品をシェア

pagetop