わたし、結婚するんですか?
「記憶をなくしたことがなんの関係がある」

「は?」

「記憶は思い出だ。
 好きというのは、感情だ。

 記憶がなくなっても、お前が俺を好きなことは変わらない」

 ……ちょっと待った。

 何故、他人の貴方が私の気持ちを言い切りますか、と思ったのだが、遥久は、
「俺だったら、そうだろうと思うからだ。

 俺は記憶がなくなっても、お前が好きだ。
 きっと変わらない」
とまっすぐ洸を見つめて言ってくる。

 どきりとしなかったと言えば、嘘になる。

 だが、そこで、遥久は一瞬、上を見つめ、
「……ということは、お前の方が俺より、遥かに薄情、ということだな」
と言ってきた。

 ま、まあ確かに。
 遥久の話がすべて本当なら、私は、ずいぶんとひどい恋人だと言うことになってしまうのだが――。
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