わたし、結婚するんですか?
「洸。
 記憶はないのかもしれないが。

 俺はせっせとお前に尽くしているとは思わないか。

 猫が欲しいと言ったら、買ってきて。
 記憶がないとか訳のわからないことを言い出しても、信じて。

 友達が来てるから、外で時間を潰せと言われたら、くそまずい珈琲を飲みながら、時間を潰して。

 その間、キャットタワーを持ち歩いて」

 うう……すみません、と思っていると、遥久は脅すように言ってくる。

「此処でキスのひとつもさせないとかないよな?」

 えええーっ、と思っている間に、母親と同じで、やたら行動の早い遥久は、もう勝手にしてきていた。

 ええええーっ、と思い、思わず、押し返す。

 が、遥久は離れない。

 むしろ、洸の身体をつかむ手に力を込めてきた。

 離してくださいっ。

 腰に手を回さないでくださいっ、と無駄な抵抗をしていると、ようやく離れた遥久は間近に洸を見、訊いてきた。
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