わたし、結婚するんですか?
 いや、仕事の話に、男前、は関係なくないですか? と思いながら聞いていると、章浩はつかんだままだった洸の両手を振り、言ってきた。

「なのに、悠木課長は俺を睨んでくるんだよ~」

「あの~、一社員に脅されないでください、社長」

 そう言ったあとで、洸は、待てよ、と思う。

「もしや、悠木課長は、社長に恨みがあって、私に近づいたとか?」

「なにっ?
 お前の結婚相手は、悠木遥久なのかっ?」

「そういえば、私の夫になる人間は、自分が鍛えてやるとか言ってましたね、社長」
と昨日の話を蒸し返してみたが、章浩は無言のまま、……無理、無理と手を振ってくる。

 そうだろうな。

 なんだか、遥久の方が役者が上だ。

「でも、あの、結婚相手っていうか。

 私、あの人に騙されている気がするんですよね。

 あんなすごい人が私の相手というのがどうにも納得いかなくて。

 格好いいし、仕事も出来るし、時折、えっ? ってこともするけど、可愛いらしいところもなくもないし」
と続く洸の言葉を遮るように、章浩が言ってきた。

「……おい。
 なに急にのろけてんだ」
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