俺様社長の重大な秘密
助けられたことに安堵しつつ、頼まれた資料を手に取ると、その足でそのまま秘書室に戻り、幸は、西園にそれを渡した。

「…ありがとう、助かりました」
「…いいえ、他になにもなければ、仕事に戻りますね」

「…あぁ、…丸岡さん」
「…え?」

西園に呼び止められ、幸は振り返る。

「…その手に持ってる名刺は?」
「…ぁ、これはちょっと助けてもらったときに頂いたもので」

「…助けられた?」
「…あーえっと、階段をちょっと踏み外してしまって。情けないことです。それじゃあ」

「…あ、丸岡さん!」

幸は逃げるように、社長室に戻っていった。

幸は思った。言えるわけがない、誰かに押されて落ちたなんて。

西園は眉間にシワを寄せた。

階段を踏み外して落ちたなんて、笑える話じゃない。

それに、たまたまとはいえ、助けてくれた人がわざわざ名刺なんて渡すだろうか?と。

この事を、楓の耳にいれておくべきか。

西園はしばらく考えていた。

…。

その頃幸は、社長室に入るなり、手に持っていた名刺を急いで手帳にしまった。

そして、楓の方をチラ見した。

…楓は仕事に集中してるせいか、幸の方を見た素振りはなかった。

幸はそれに心底ホッとした。
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