俺様社長の重大な秘密
「…丸岡」
「…は、はい」

突然名前を呼ばれ、声が上ずった。

振り返った楓は両手で幸の顔を包んだ。

幸は何事かと目をぱちくりさせる。

「…体調悪いのか?」
「…えっと、少し疲れが?」

嫌がらせに疲れたなんて、口が避けても言えない幸の心苦しい言い訳。

「…なぜ、疑問形なんだ?」
「…すみません」

アタフタする幸を見て、楓は頬を緩めた。

「…そうとも知らずに、怒って悪かったな」
「…いえ、あの、その、あ!」

楓は幸を抱きしめた。

抱きしめられ慣れてない幸は顔を真っ赤にして固まる。

「…環境も変わって、疲れが出たんだな。今日はもう帰るか?」
「…い、いえ!頑張れますあの、もうその、社長に元気もらったんで大丈夫です」

そう言ってはにかんだ幸のエクボがどうしようもなくかわいいと思った楓は、幸をぎゅーぎゅー抱きしめた。

「…く、苦しいです。社長」
「…幸があんまり可愛いから」

「…なっ!何を言うんですか?!」
「…幸をこのまま腕の中に閉じ込めておきたい」

「…社長!からかわないでくださ」

真剣な顔で見つめられ、幸がまた固まった。

「…からかってない。いつも俺は、幸に対しては本音でしかものは言わない」
「…」

「…何時になったら、幸は俺を好きになってくれるんだろう?俺はこんなにも幸が好きなのに」
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