俺様社長の重大な秘密
「…遅い」

…あれから一時間経過したが、幸が帰って来る気配がない。

もう終業時間にも関わらず、鞄はデスク横に置かれたまま。ただ、幸の姿がない。

帰って来る気配もない。

いてもたってもいられなくなった楓は立ち上がると秘書室に。

「…丸岡はどこだ?帰ってこないぞ」
「…私も何度か携帯をならしているんですが、応答もなくて…社内を探してみます。社長はここでお待ちください。丸岡さんが帰ってきたら連絡もらえますか?」

「…わかった」

…待てど暮らせど、西園から連絡もなく、仕事どころではなくなった楓は、社長室を飛び出した。



その頃、幸は。

「…ん?…ここどこ?」

社長室で雑用中、内線が入り、営業部に呼び出され、階段を降りていく。営業部の階に着き、目的地まで歩いているところまでは覚えているのだが、そのあとの記憶がない。

…今は頭が酷く痛む。

中は真っ暗。とにかく今はここがどこなのか把握する必要があった。

手探りで壁をつたい歩き、電気らしきスイッチを見つけ、点けてみた。

「…点いた。…資料室、かな」

たくさんの棚に、沢山のファイル。

埃っぽくて、今は保管庫のような部屋のようだ。

腕時計に目を落とせば、終業時間を過ぎていた。

幸は頭を押さえながら、ドアを開けようとした。

が、開かない。

外かぎのようだ。

幸は途方にくれた。
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