俺様社長の重大な秘密
3.助けてくれたのは
人通りもなく、相変わらず鍵も開かず、幸は悲しくなってきて、ぐずぐずと泣き出してしまった。

携帯をかけようにも鞄の中。

泣いていたら、お腹までぐぅーっと鳴り出す始末。

「…私、ここで死ぬのかも」

こんなことなら、早くこの会社を辞めれば良かった。

いや、そもそも楓に出会わなければ、こんなことにはならなかったかもしれないと思ってしまった。

…そんなときだった。

開かずの扉が開いたのだ。

「…あれ?電気が点いてるって?!君!こんなところで何してるの?」

仕事のため、保管庫に来たのは。

「…貴方は」
「…また、いじめにあった?こんなところに閉じ込められて」

ポロポロ涙を流す幸を立たせると、埃を払いのけそう言ったのは、階段で助けてくれた、システム部の課長、榊伊織だった。

「…とにかく、ここを出よう」

そう言って肩を優しく掴むと、連れ出してくれた伊織。

「…あの、仕事のために来たんじゃ?」
「…そうだけど、今はそんな事より君を連れ出してあげる方が先決だよ。きっと、帰ってこない君のこと、上司も心配してるよきっと、で、どこの部署?」

「…秘書室に」

「…え?!君、秘書課で働いてるの?それはいけない。急いで帰ろう」

幸は同じ会社の人間だと言うことはわかってたが、まさか、秘書課の人間だと思ってなかった伊織は、急ぎ足で幸を連れ、秘書課に向かった。
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