俺様社長の重大な秘密
長い会議がようやく終わった楓は、立ち上がるなり、周りの重役たちの声にも目もくれず、急ぎ足で社長室に戻った。

…ずっと気になっていたこと。

会議中に思い出したのだ。

榊伊織。…ライバル会社の社長の息子。

楓の手を下した訳ではなかったが、東沢は業績を伸ばしたが、榊は経営不振になり、最終倒産してしまった。

なぜ東沢に伊織がいるのか?考えれば直ぐにわかった。

楓への復讐。それだけだ。

そんな男を、大事な幸の元に置いておくなんて、もうこれ以上耐えられなかった。

あせる気持ちを何とか押さえながら、勢いよく開けたドア。

そこに飛び込んできた幸。

しかも、涙目で…これは、絶対何かあったのかと思った楓は、後から追ってきた西園に幸を託して、伊織のもとへ。

「…榊伊織」
「…どうされましたか、東沢社長?」

何事も無かったような顔の伊織に怒りが頂点に達した楓は、伊織の胸ぐらを掴んだ。

「…幸に何をした?」
「…何をしたか、聞きたいですか?」

次の瞬間、楓は伊織を殴り飛ばした。

「…俺に何をしても構わない。だが、幸にだけは、復讐の矛先を向けるな」

復讐。その言葉に、伊織の眉をピクリと動かした。

「…俺が誰だかわかったんだな」
「…榊物産の榊社長の息子だろ」

「…気づくのが一足遅かったな。彼女はもう」
「…きさま」

もう一度、伊織の胸ぐらを掴んだ時だった。

楓の手を幸が握った。

「…私はなにもされてません。だから、これ以上殴らないで。私のせいで、社長の手を汚さないでください」

「…幸」
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