俺様社長の重大な秘密
「…失礼します。言いつけ通り、お伺いしましたが」

若干震える声で、何とか言葉を紡ぎだした幸。

楓は、書類に落としていた視線を、幸に向けた。

「…そこに座って」

促されたのは、来客との対談用のソファー。

「…ここで、構いません」

そんな大事なソファーに座るなんて恐れ多いと思った幸はそう返した。…が。

「…いいから座れと言った。二度も言わせるな」

不機嫌に返され、恐怖を抱きつつ、幸は、急いでソファーに座って、次の言葉を待った。

が、楓は何を言うでもなく、立ち上がると、静かに席を立ち、こちらに向かって歩いてくる。

幸は、俯いて、何を言われるのか怖くて、目をぎゅっと瞑った。

次の瞬間、幸の真横が傾いたかと思うと、幸の腕をぎゅっと掴まれた。

まただ。

なぜ、二度も楓は幸の二の腕を掴んだのか。

恐る恐る目を開けた幸は、楓に視線を向ける。

…何事だ。

今度は二の腕をムギュムギュと何度も触っている。

「…あの、二の腕がどうかしましたか?」

恐いながらも、何とか問いかけた幸。

すると、楓は二の腕を掴んだまま、スッと顔をあげた。

…イケメンの真剣な顔は恐ろしい。

こんな間近でイケメンの顔を拝んだのは初めての事。

幸は、真一文字に口をつぐんで、楓を見た。


「…俺の理想そのものなんだ」
「…はい??」

理想?…この二の腕が??

何を言ってるのやら、幸は怪訝な顔をした。
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