俺様社長の重大な秘密
「…失礼します。丸岡ですが…秘書の西園さんはいらっしゃいますか?」

「…あぁ、待ってたよ。さぁ、入って。あ、段ボールは私の横の空いてるデスクに置いて」

西園に言われた通り、デスクの上に、荷物を置いた。

「…あの、何でこんなことになったのか、説明していただけませんか?」

西園を真っ直ぐに見つめ、問いかけた幸。

「…昨日の事、覚えてますよね?」
「…忘れられませんよね」

何て言えば、西園は苦笑する。

「…丸岡さんが一目で気に入ったらしくて…一目惚れとはこの事ですよね」

「…全然嬉しくないんですが」

げんなりした顔で言う幸に、西園は続けた。

「…社長がモテるのは、知ってらっしゃいますよね。そんな彼の思い通りにならない女性は丸岡さん、貴女が初めてなんです。急に結婚なんて口にしたのは驚きましたが、本気でそうしたいんだと思います。だからと言って無理やり結婚なんて、させません。先ずは、社長がどんな方なのか、知っていただき、返事をしていただきたいのです、秘書として、いえ、一友人として、宜しくお願いします」


切実な言葉に一瞬口ごもるも、幸の心は動かない。

「…西園さんには申し分ないんですが、やっぱり無理です」

「…丸岡さん、」

ガチャ。

「…西園がこんなに言ってるのに考えてさえくれないのか?」
「…社長」

「…こんな私が気に入らなければ、クビにしてもらって結構です。失礼しました」

とにかくこの場から逃げ出したい幸は、楓に啖呵を切ると颯爽と秘書室を出ていこうとする。

が、そんなこと許される筈もなく。
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