臆病者で何が悪い!


「な、何を言っちゃってるの? そうやって、さりげなく自慢ぶち込んで来るのやめてもらえます?」

何故だか私まで恥ずかしくなってきて、話題の核心を思わず逸らしてしまった。

「それってつまり、自分から言わなくても女の方から言い寄って来てたってことだよね? ああ、これだから人生表街道歩いて来たような人はイヤだよ」

「悪いか。向こうが勝手に言って来るんだから仕方ないだろ」

「うわぁ。感じ悪い。女の敵! モテない人の敵! 人間の敵だ!」

「人間の敵ってなんだ。勝手に人間を代表するな」

「だって、私だってそんなこと言ってみたいよ。『仕方ないでしょ? 男の方が勝手に寄って来るんだから』ってね。あー、生きてる世界が違うわー」

私が一人わあわあと騒ぎ立てると、突然生田が私の正面に顔を近付けて来る。
ついさっきまで焦って困っていたくせに。また、悪だくみの顔――。

「あんたと話してると、すぐ話が脱線する。とにかく。覚悟しておけよ」

「な、何に……?」

思わず身体を引いて、生田との距離を死守する。

「人生初のことをしてまであんたを俺のものにしたんだ。だから、徹底的に溺愛してやるからな」

「は――」

私のこれまでの人生に縁のなかったワードが出て来て、一瞬息が止まる。

「はぁ? また、そんなこと言って! ばっかじゃないの? 酔ってるんでしょ」

「確かに、酔ってるかもな。でも、俺はどんなに酔っても記憶なくしたりしないから安心しろ」

「むしろ、その記憶なくしてよ」

結局、私がまたあたふたとしている。
絶対、わざとだ――!

いつの間にか形勢逆転。
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